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東京地方裁判所 昭和47年(行ウ)132号 判決 1974年7月01日

原告 理研電子株式会社

被告 国

訴訟代理人 下元敏晴 外四名

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

(原告)

「被告は原告に対し、金二二五万六九八〇円及びこれに対する昭和四一年一二月一日から本裁判確定の日まで年五分の割合による金員を支払え。」との判決並びに仮執行の宣言

(被告)

「原告の請求を棄却する。」との判決並びに担保を条件とする仮執行免脱の宣言

第二原告の請求の原因<省略>

第三被告の答弁及び抗弁<省略>

第四被告の主張に対する原告の反論及び抗弁に対する答弁<省略>

第五証拠<省略>

理由

一  請求の原因一及び二記載の各事実は、いずれも当事者間に争いがない。

二  原告の本訴請求は、要するに、本件修正申告及び本件賦課決定の各一部が無効であることを前提として、既に納付した法人税、延滞税及び重加算税の各一部の返還を求めるというものである。

ところで、国税として納付された金員について、それに対応する確定した租税債務が存在しない場合には、国は、これを収納すべき法律上の原因を欠くのであるから、公法上の不当利得の性質を有するものとしてこれを納税者に返還すべきであることはいうまでもない。国税通則法五六条にいう過誤納金とは、かかる場合に生ずる国の返還金をいうものである。

そして、同法の過誤納金に関する規定は、納付された国税に関し民法の不当利得の特則を定めたもので、過誤納金について民法の不当利得の規定の適用を排除する趣旨であると解するのが相当である。

してみれば、原告の本件納付税金の返還請求は、ひつきよう、国税通則法の誤納金の還付請求にほかならないというべきである。

そして、同法七四条一項によれば、過誤納金にかかる国に対する請求権は、その請求をすることができる日から五年間行使しないことによつて時効により消滅する旨規定され、右規定にいう「その請求をすることができる日」とは、無効な申告又は賦課処分に基づく納付の場合は、その納付のあつた日と解すべきである。そこで、本件についてみるのに、前記争いのない事実によれば、昭和三八年、三九年度分の法人税、延滞税及び重加算税の納付日は、それぞれ昭和四一年八月一九日、同年九月一七日、同年一一月三〇日であり、本訴提起の日が昭和四七年九月一三日であることは記録上明らかであるから、仮に、原告主張のとおり本件修正申告及び本件賦課決定の各一部が無効であつて、超過納付金につき還付請求権が発生したとしても、同請求権は既に時効により消滅したものといわざるを得ない。

三  してみると、右超過納付金の還付を求める原告の本訴請求は、その余の点につき判断するまでもなく、理由がないことが明らかであるから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 杉山克彦 石川善則 吉戒修一)

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